先ずは今回、受賞されたケーブルテレビ局の方々、そして関係者の皆さま、本当におめでとうございます。
50回大会にあたり、審査委員長として、審査会での議論を少しご紹介させていただきます。
予備審査を経た作品を審査員各々で視聴したうえで審査会に入ったわけですけれども、いつもより少し時間がかかるのではないのかと思いました。
と言いますのは、この十数年の間にケーブルテレビの番組作りのグレードが上がってきております。その上で、地域に根ざした、番組地域に向き合った番組と言いながら、さまざまな内容のものが増えてきたように思います。
例えば、グランプリはじめ上位の作品を見てみるだけでも、美濃柴犬を採り上げ、高校生による保護活動を深掘りする、それも割と時間をかけて取材した作品がある一方、自分たちの地域で大きな災害が起きたとき、どうすべきであるか、ある種、自省しながら番組を作ったもの。それから最優秀新人賞でしたが、地元で活躍し、引退した電車がどのような形で地域に還元されるのか追った作品など、視点が多様になってきていることが顕著でした。
言うなれば、どの物差しで測ったらいいのかということで、議論をせざるを得なくなるだろうと私は思いました。
ところが、意外や意外。今回の審査会は予定の時間内に収まりました。
それは一本一本がとても際立っていて、なおかつその背骨にしっかりと自分たちの問題意識や視点がはっきりしているものが多かったのではないかと。その視点がはっきりしているものを私たちは高く評価いたしましたし、それから少し未来を見据えたもの、これまでの蓄積を基に未来を見据えた作品というのも評価されたのではないかと思います。
特にグランプリを受賞された大垣ケーブルテレビさんの作品のように、若者たちがこの地域社会をどのように考えるのか、このような未来志向の作品が、他にもたくさん出てきたことに関して、非常にありがたくも嬉しくも思えました。このような結果は、まさに作り手一人一人の問題意識というものが明確だからだと思います。
また、加えて申し上げると、例えばドローン撮影や4K制作など新しいテクノロジーに対しても挑戦的になってきており、あえて申し上げれば4K奨励賞は新人賞部門から出ました。これも今回の特色なのだろうと思います。その意味においても、ぜひ、ますます地域を深掘りして番組を作って頂ければというように思います
そしてもう一つ申し上げたいのは、今回は50年の節目ということで、50回記念特別賞を用意させていただきました。
この50年の歴史の中で、しっかりと番組作りをして行く精神を継続されてきたということで、(株)ぴ~ぷる(佐賀県唐津市)さんに贈ることにいたしました。過去19回の入賞、今回で20回目となる実証的なデータが、その活動を裏付けています。この50年を振り返りますと、たくさんご褒美を差し上げたい思いもございました。審査員の中でも、こんな活躍をされた人に差し上げましょうとか、こんなに素晴らしい取り組みを表彰しましょうとか、さまざまな考えがございましたが、この先も60年、70年、80年、皆さんにしっかりとケーブルテレビらしい番組作りをしていただきたいという未来への思いも込めて、審査員で決定し、ぴ~ぷるさんを表彰させていただきました。
今回は50回目の節目ではございますが、これまでの蓄積というものを糧として、来年51回目、そして再来年52回目と回を重ね、ケーブルテレビ各局の皆さまがこれからも素晴らしい作品を作っていただければと思います。
受賞の皆さま、本日は誠におめでとうございました。
(贈賞式での総評コメントより)
農業高校の生徒たちが、地元由来の貴重種である美濃柴犬に着目し、その保存と繁殖に挑戦する姿を丁寧にカメラが追い続けている。生物学的な背景など、どうしても説明的になりがちな内容も、生徒たちの目線にあわせることで、視聴者にとってもわかりやすい展開になっていた。口の重い年齢でもある男子高校生たちも含め、高校生の等身大の美濃柴犬への想いなど、その心情が映像から伝わってくる地元ケーブルテレビ局ならではの秀作。
顔面も含め全身茶色の柴犬は地元美濃の貴重種だ。この犬の保存繁殖を試みる地元農業高校生の研究を長期にカメラは追う。子犬にはアンズ、モミジなどの名前を付け、日々の散歩、手入れ、健康診断など各種検査で大切に飼育。発情期は2週間の排卵期を見極め、専門家の指導も仰ぎ無事子犬を出産。自分たちが育てたかわいい子犬たちの譲渡先も慎重に選び、下級生にも郷土の犬を育てる技術ノウハウを継承していく。大垣ケーブルのカメラが、地域の農業高校生達の真剣さに魅惑されて、応援団に廻ったことが率直に伝わって来る。
岐阜県の地犬、美濃柴犬は赤毛が特徴の希少種で、保存会も存在するという。そうした美濃柴犬を育てる農業高校の物語ですが、この番組で初めてその存在知りました。種の保存と認知度向上を目的に2019年に研究班が誕生し、山犬を育て、飼い主を探す高校生たちの活動を2年にわたって取材し、紹介しています。母犬を展示会に出展したり、研究成果発表会でも好成績をおさめるなど高校生研究会班の存在が大変貴重なものだと感じました。母犬である杏ともみじの老後の面倒をみるのが夢だという卒業生の言葉に感動しました。研究班のその後の活動もぜひ番組にしてもらいたいと思いました。
希少種は生命の歴史そのものであり、かけがえのない価値がある。本作は、地域の希少種である美濃柴犬を守る農業高校の生徒たちの活動を根気よく取材した。種の保存=繁殖に関する研究に真摯に向き合う生徒と柴犬が共に成長していく2年間を克明に描く。生徒たちの試行錯誤を重ねる奮闘ぶりと飼育の現場のディティールとで魅力的な番組に仕上がっている。シーンのひとつひとつから興味深い発見があり、生徒たちの深い愛情と希少犬の種の保存という現実がわかりやすく視聴者に伝わる。代々の高校生たちのバトンが美濃芝犬の生命をつなげていく感動があった。続きもみたい。
希少種の美濃柴犬を育て、研究し、繁殖させる農業高校生たちに寄り添い、子犬の体温が伝わってくるような温かい作品に仕上がった。体温測定、離乳食、発情の周期調べなどの日常の世話に、子犬の誕生、譲渡会、後輩への引き継ぎ式など、さまざまなシーンがつながって、見る者を引き込む。撮影のため、相当な時間と労力を使っていることをうかがわせる。柴犬も可愛いが、一途に取り組む高校生の若さも微笑ましい。専門高校(旧・職業高校)の存在意義を、私たちに改めて考えさせてくれる作品だ。
交尾や出産、種の保存に至るまでを主体的に取り組む高校生が清々しく頼もしい。カメラは命を守り育てる取り組みだけでなく、新たな飼い主に“命を託す”過程まで追っていきます。この実体験はこれからの人生にとても大切なものを与えてくれるはずです。およそ2年に及ぶ丁寧な取材が、生徒たちのごく自然な表情やつぶやきを記録することを実現しました。この番組を通して、絶滅の危機を迎えた希少種を守っていくことがいかに困難なことかを思い知りました。一方で、後半の発表会からは成長を感じました。もしも全国すべての学校に馬や子犬がいたら、いじめや不登校が減るかもなどと思ってしまいました。素晴らしい番組をありがとうございます。
美濃柴犬の存在や知られざる一面という横軸、そして柴犬の繁殖と飼育・成長を通して高校生達が自ら成長していく物語という縦軸。これらが見事に交差し紡がれた構成が実に見事であり見ごたえがある作品であった。その背景にあるのは、丁寧な取材・撮影が基礎になっている。取材の回数だけでなく、取材時に流れる時間を高校生や関係者、ひいては柴犬たちと密に共有した事が結果、映像の温かさやコメントの共感性を生み出したと言える。
地域で長年従事しているケーブルテレビならではの番組です。制作者の目線が温かいのと取材対象の高校生たちが違和感なくカメラを受け入れているので微笑ましく最後まで拝見出来ました。この関係値は地域メディアでしかできない事で称賛に値します。やはり映像制作は興味と愛です!それを実践出来ているスタッフの皆さんと上司の皆さま方に敬意を表します。美濃柴犬と言う犬種を紹介するだけでも他所から興味を持たれる良い側面もありますね。
2024年元日に発生した能登半島地震により、甚大な被害を受けた地域を放送エリアとする射水ケーブルネットワークが、地震の発生とその被害、そして、その後の復旧を改めて総括した作品。しかし、ただ単に発災直後の能登半島の様子や、その後の復興状況をまとめるだけではなく、データに基づいた分析を踏まえ、今回の震災から得た教訓と復興への覚悟、そして、今後の備えについて、当事者として向きあっていることが伝わってくる。
他所から現場に駆けつける報道ではなく、現地住民であるケーブルTVの社員が咄嗟にカメラを回した修羅場の迫力がある。住民避難の状況、海岸近くの液状化現象等の被害状況を伝えた後、被災直後に開いた地域ごとの具体的な反省会が秀逸である。
避難所の公共施設に鍵がかかっている場合の対策。大津波の警報が出ている時、住民は海岸近くに位置する指定避難所に向かって、果たして避難するだろうか、など。平時の形式的な避難訓練ではなかなか思いつかない具体的な鋭い反省が列挙されていた。
まず、冒頭の木村レポーターによる地震当日の映像が生々しく、たまたまかも知れないがリアルタイムの映像が衝撃的でした。
地震発生から10分後の避難所の様子、10日後のボランティア活動、2か月後にケーブル局のスタッフや市民が記録した映像などで制作された生々しい番組など、いずれも地元メディアらしい視点での番組づくりに共感しました。
能登半島地震。その時人々はどのように行動したのかを細かに検証し、問題点を抽出した。避難所の鍵問題などに代表される、平時に気づきにくい点の洗い出しや、人流データによる分析などは見事。スタッフが足で集めた多くの人からの取材による今後への問題提起は、大変に説得力があった。もはや災害列島と化した感があるなかで、 このような視点は地域にとって極めて重要である。可能であれば、ここでの問題提起が今後どのように解決されていくかもぜひ継続的に取材をしていただければと思う。番組冒頭、神社で被災しながら、子ども抱え現場を冷静に伝えるスタッフに頭がさがった。
能登半島地震を地元に引きつけ、対応を検証した。地震発生のまさにその時、射水ケーブルの社員たちが、八幡宮や新湊中学校で揺れの実況中継をするシーンは貴重だ。液状化、津波、さらに渋滞や備蓄など課題の存在が具体的にわかる。寒い時期、あえて中学校のガラスを割って人を入れた判断も改めて考察している。番組の最後に、各地域の振興会長に簡潔なインタビューを重ね、テキパキとした形で編集し、一カ所だけでなく地域ごとの検証をしているのも、鮮やかな作り。手間暇を惜しまない検証姿勢を感じる。
冒頭から引き込まれました。子どもを連れて初詣に訪れた神社で、スタッフが能登半島地震に遭遇。自らその日とった行動を検証する。そうした縦軸がぶれずに存在するため、同じ恐怖や不安を抱いた地域住民も最後まで注視して見たはずです。加えて効果的だったのは、人々がいつどこからどこへ移動したのかを集積した人流データの解析です。専門家による津波への警鐘と共に説得力を増しました。他にも、避難所となった学校の鍵の問題では「担当者も被災しているから行政はすぐには来ない」という言葉が印象的です。「何が正しい行動だったのか?」という自問をわかりやすく住民と共有し追い求めた、ケーブルテレビの存在感を発揮した秀作です。
タイトル通りまさに「検証」であり、教訓として何が生かせるのか、を追求した災害事後報道の見本的作品である。ドキュメンタリー制作では定性的な社会学的アプローチを得手とするが、人流データ解析を加えた定量的、かつ客観的な思考が作品を厚みのあるものに仕立てた。解析により避難時における課題を抽出し見える化することで、市民の行動は果たして正しかったのかという重大な課題を提示することが出来た功績は大きい。
私、個人的にもご縁がある射水市、特に内川地区は海岸線が近くスタッフの皆様やご家族が被災した神社は海から100m程度しか離れていません。偶然にしても社員家族が居合わせて撮影された映像は何より訴求力があります。今時は安全確保とかいろいろな建前が存在していてもどかしい状況でその中でもお子さんを抱き、守りながら伝えて頂いた映像は後世に残りますね!その後の取材も丁寧に構成されていて素晴らしいです。災害検証番組のお手本になる番組です。
地域で子どもに1日200円までの駄菓子を無料で提供することで、子どもたちの居場所を用意する一方、その子たちは手紙を書くことで、この制度を支える地域の大人ともつながっていくという本巣市糸貫の「つきの家」の活動を、カメラが丁寧に拾い集めている。「貧困」や「虐待」など、子どもを取り巻くシリアスな問題が顕在化する社会だからこそ、等身大の地域による子育て互助システムの有用性を示した説得力のある作品。
高校生までも子供なら1日200円まで無料という駄菓子屋さんは、地域の大人たちの寄付で運営されており、子供たちを大切に思う地域の人々の愛情を感じさせてくれます。人柄の良いよい店主と子供たちとの触れ合いや父と娘の会話が素敵でした。子供たちの集会所だった駄菓子屋は、いまやなかなか姿をみることも出来なくなり、寂しい限りだけれど、ここには暖かい空気が流れていると感じられました。地元の元中学校の校長先生だったという方のナレーションも、番組に味わいを添えてくれていたと思います。
メディアには既出の駄菓子屋。大人の寄付と子供の居場所という仕組みはよく紹介されているが、この作品は他と一線を画する。それは取材対象者との距離感でありカメラが空気に溶け込むまでの「粘り」だ。永らく顔を見せなかった中学生がふとこの店に戻る瞬間、焼肉屋の父親の独白を見事に切り取っている。いずれも「ねばり」勝ちだ。社会的なインフォーマル空間を丹念に描いた当作品は社会に第三の居場所の大切さを投げかけている。
無医村をたった一人で支えている阿部医師の孤軍奮闘ぶりを取材し、過疎地域の医療の現実を突きつけた。阿部医師を通して高齢化する村の人々の姿が見事に立ち上がってくる。その取材の確かさは特筆に値する。高齢化、医師不足をどう乗り越えるのか、さまざまな取り組みで故郷を守ろうとする阿部医師の日々は、いま手を打たなければならない現実そのものだ。「ヒーローはいらない」という阿部医師の言葉の重み。過疎地域だけの話ではない。日本全体の問題として何ができるのか、自分ごととして考えなければならないことを痛感させられた。
"やぶ医者大賞の存在は知りませんでした。単に献身的に診療を行う医師の姿だけでなく、「医療と行政の集約化」「巡回寺子屋」「人生会議」など、様々な手段を講じて真摯に地域医療と向き合う阿部医師の姿に感銘を受けました。この地域に暮らす人たちは幸せですね。「医療は人生を変える」という言葉も印象的。きちんと整理された構成で最後まで迷子にならずに見ることが出来ました。 *「もし私が制作したら」という視点で申し上げるなら、エンド付近はナレーションを減らしてもう少しコンパクトにまとめたと思います。やや冗長に感じました。それからタイトルのどこかに“やぶ医者”という言葉を使ったと思います。以上、参考までに!"
日本で生活する人で、花火を嫌いな人に出会うことは難しい。そんな好感度の高い花火にまつわる様々なギモンを集め、テンポ良く解説していく典型的な「面白くて、ためになる」知的エンタテイメント。製作者の熱意が花火職人にも伝わってか、秘伝(?)の制作工程にまでカメラが入っていく様子は、製作者冥利に尽きる。「花火は人の一生と同じ」との解説も、様々なギモンを解き明かしてくれた後ゆえに、含蓄を感ずる。
簡明なタイトル通り、花火に関して人がふだん疑問に思い、そのままにしていることを、丁寧に解き明かしてくれる。雑学とも言えるが、ためになる。配合、星掛け、玉込め、玉貼り、乾燥など「作り方」がわかりやすい。尺玉を一つ作るのに1か月半~2か月かかるというのも、うなずかされる。「色の出し方」「打ち上げ方」「値段」「水中花火」なども、いずれも「そうだったのか」。打ち上げが約30年前までは直接点火だったが、今は電気導火で遠隔点火、打ち上げ時にヒューッと鳴るのは笛を付けているからなども、初めて知ることばかり。なるほど、なるほどと、飽きさせない。
いやーこれは参りました!審査員としてはとても冷静では視聴できない良い番組です。世の中知らないことはいかにたくさんあるのかを痛感しました。あまりにも知らないことが次々と出てくるのですっかり前のめりで一気に拝見しました。花火の知見を高めてくれたトリセツのような番組で素晴らしいです。すっかり視聴者になりました。多少の荒っぽさもありますが全て昇華している勢いがありますね。各局に番販されているのも納得の内容です。
関東大震災時の山津波(土石流)で相模原地区の16人が死去。その99年後に地元の篤志家らが「地震峠を守る会」を立ち上げた。災害で姉を亡くした新井エツさんが包装紙の裏に書き残した手記、犠牲者名を、大事な記憶として継承する「守る会」の活動を、カメラは追う。地域の歴史が刻まれる。守る会は、記憶を繋ぐため、①地元のシンガーソングライターに犠牲者全員の名前を入れた歌を作ってもらう②地元の高校の漫画研究部に依頼し記録を漫画化してもらう、という取り組みをしている。これらのユニークな取り組みは、「継承」を課題とするほかの場でも生かせる知恵ではないだろうか。
能登震災の後に拝見したので、よりリアルに入ってきて知見も深まります。今回拝見した災害県連番組の中では直後の検証と言うよりはかつての語り部の方が望んだ被災直後の状況を多角的に扱っていて構成も丁寧で初めて観る方々も引き込まれてゆくのではないでしょうか? 歌を作ってもらったりマンガにしてもらったり良いまとめ方ですね。山津波と言うかつての言葉を持ってきたのは良い成功事例で、土石流と言う怖さを認識するきっかけになりました。
全国の3割が空き寺といわれる現実のなか、寺を継ぐ副住職の成長を1年半にわたって取材したドキュメンタリー番組でした。今や希薄となったお寺さんとの付き合い、お寺離れが続く現実のなか、若い副住職の活動とアイディアが頼もしく感じられました。設定NPO法人「おてらおやつクラブ」という活動も大変ユニークで感動しました。将来は父である住職の後を継ぐ決意である一方、おてらおやつクラブの代表も引き継ぐか真剣に葛藤する姿に心打たれました。
「寺離れ」は度々目にするテーマですが、番組はその実態にとどまらず、副住職が苦しみながら目の前の壁を克服しようともがく姿を追っていきます。中でも、お供え物を活用した「おてらおやつクラブ」の活動では、思わぬ展開が緊張を生み、視聴者は固唾を呑んで見守ることになります。そんな中、「情けない…悔しい」と主人公がカメラの前で素顔を見せる。その関係性を作ったことがすべて。この番組を一層深いモノにしています。父である住職が「家対お寺という構図から人対人になっていく」と語りますが、檀家の前で「メンタル不調があったら助けてください」と苦悩を明かす芳樹さんの正直な姿は、新しいお坊さんの姿を示しているようです。
新年に開かれる成人式で久しぶりで集まった若者たち。地元のケーブルテレビは彼らの幼い頃の映像を記録していた。成人した今、ケーブルテレビが差し出す写真集を覗き懐かしむ。その中に、小学校の通学時に自動車事故で生死の境を彷徨った女性がいた。彼女は不自由な体で事故後も、幼い頃から始めた剣道を続け、いまは剣道の有段者で、病院にも就職を決めた。けがをした体で剣道に励む小学生時代の自分を懐かしむ。それを見守る付き添いの両親、特に祖父母の孫を慈しむ姿が印象的だ。そして思う。ケーブルテレビは、地域の喜怒哀楽を記録するアルバムなのだ。
何よりも読後感が清々しい。地域に長年密着している局だからこその企画だが、成人式での人探しという着想は、臨場感が素晴らしかった。アーカイブだけが手がかりの ぶっつけ本番人探しのライブ感あふれる方法論が、子ども時代とその後の20歳を迎えた今を瑞々しく伝えた。登場する20歳それぞれの姿は、会場とアーカイブで紹介されるだけなのに、その生きてきた時間を感じることができ、心に響くものがあった。後半の灯さんのパートも、事故を乗り越えて成長していく歳月に寄り添って撮影してきたスタッフの気持ちも伝わってきた。灯さんの20歳を一緒に祝いたい、そんな気持ちにさせられた。
SDGsをキーワードに、地域づくりや地域の活性化に主体的に関わろうとする高校生・大学生たちの活動に密着して、若者による地域づくりの課題や可能性を問うていく提言型のドキュメンタリー。住民目線の課題解決型報道、パブリック・ジャーナリズムを続けてきた中海テレビらしい作品。学校(高校)の存在が、地域づくりに不可欠との指摘は示唆的である。
若者の減少が続くなか、街づくりと若者を結びつける活動「二十歳の集い」を支える高校生サークルを取材。もち米やさつまいもを育て、餅をつくり芋あんを作って「二十歳の集い」で配る活動が紹介されています。高校のないエリアで、高校生と地域コミュニティをつなぐためのサークル「高校がない町に高校生が集まれる場をwithYou翼」を立ち上げ、いま36人が参加しているという。また、過疎の地域と交流する大学の部活動「とっとり若者地方創生会議」の模様も紹介しているが、こうした活動を支援したいし、番組化して紹介したケーブル局の姿勢にも拍手を送りたい。地域の自治体にもぜひ見てもらいたい番組として評価したいと思いました。
鳥取県の過疎地(南部町、八頭町)での若い人たちの地域交流活動を追った。「With you 翼」は高校生のサークル。中学を卒業すると南部町を出てしまう彼らに町内に集まれる場をという、その設立の由来は、全国の高校がない町村にもヒントになるだろう。「公立鳥取環境大学地域交流部」は大学生。八頭町での「宇宙子ども教室」や、おそらく高齢者向けの「スマホ教室」など、交流対象の年代は広い。「出て行かないで」ではなく、「帰ってきたい時に帰りやすい環境を作っておくことが大事」というまとめの言葉に、なるほどと考えさせられる。
"鳥取県知事の3期目、全国知事会長も務めた著名人の大宣伝にもなったが、番組の中身は大変面白かった。日本のバブル期が始まる少 し前に、青春を送った都会育ちの若者の音楽教養が色濃く滲む。サイモン&ガーファンクル、中島みゆき、etc・・・スタジオでギターを上手に弾き唄声も披露する。司会の音楽家「安来のおじ」は、音楽の才能はもとより、その風貌と云い、会話のつなぎ、番組の進行ぶりと云い、見事なものです。他の人物との音楽談議もきっと楽しいものだろう。"
自己中心的なカタルシス番組かと思ったら、楽しいトーク番組だった。ミュージシャン「安来のおじ」が、ゲストを招いて話を聞く。その第一回。ゲストの平井知事が挙げた好きな3曲を素材に、軽妙な掛け合いが展開する。「スカボロフェア」は、4番の歌詞が反戦歌だという。知事はうんちくを傾けるだけでなく、この歌をギターでも弾いた。「時代」「宿命」の歌をめぐっても話は弾む。「鳥取は小さな県で、他県の人からせせら笑われる。へこんでしまったら何も前に進まない。自分に厳しく、頑張らないと」と平井さん。語りの上手な知事で、聞きやすい流れの番組になった。
濃密な音楽系トークバラエティー。鳥取県にゆかりのあるゲストとMCの“安来のおじ”氏の間に、ゲストが選んだ3つの楽曲をかませることで視聴者はその異空間に難なく入っていけます。「固定カメラ1台、しかもフィックスだけでここまで見せられるのか!」と感心しました。スイッチングや動きのあるカメラワークを排除したことで、かえって臨場感(没入感)を増している印象です。一方で、トリビア的なテロップで情報を加え、見る者を飽きさせない工夫も施されています。今回の座組も良かった。「スペイン風邪とジャズ」「ペストとルネサンス」の話は興味深く、知事と同世代としては「スカボローフェア」や「時代」が胸に沁みました。
豊田市の観光名所として「小原四季桜」の魅力を、ストーリー仕立てのパートも織り込みながら、迫力ある映像とBGMで、これでもかと言うばかりに紹介していく。1年に2度桜が咲く小原四季桜は、200年以上前から親しまれている豊田市でも屈指の名所だが、桜の維持管理など、その課題も少なくない。単なる地元の名所紹介に留まらず、地域の課題として見つめ直している点にも、地元のケーブルテレビらしさを感じる。
紅葉とコラボレーションする四季桜の魅力、その維持管理の苦労、今後の災害対応などが15分という短い尺に巧みに織りなされ、視聴者にわかりやすく伝わる番組に仕上がっている。この番組を見た人は、200年にわたり地域に愛されてきた四季桜を一度は見に行きたいと感じるはずだ。そんな四季桜への入門編、誘いとしては見事に成功している。
一点だけ、検討の余地ありかと感じたのは、観光大使の女性を主人公に起用した方法論だ。導入としてはメリットがあったと思うが、その方法論に縛られたことで、多少損をしている箇所もあったのではないか。もう一工夫あっても良かったか。
社会課題をストレートにドキュメンタリーで描く王道の作品も良いが、若年層やTVメディアに接触しない層には些か苦しい。間口を広げたい、リーチしたい想いはある。この作品は、ドラマ手法の導入部により視聴者が自分事化することに成功し、15分という短い時間の中で、直面する地域の課題抽出から解決まで腹落ちさせる。構成の素直さに加え、基本的かつシズルな撮影の成果により、完成度の高い仕上がりになった逸品である。
埼玉のためにJCOMが総力をあげて取り組む2020年から続く番組。埼玉出身のタレント、ゴルゴ松本のMCで、子供たちが埼玉の魅力をアンケート調査するが、意外なほど魅力のスポットがあって驚かされました。何よりも子供たちの視点が素晴らしく、歴史穴場が数々登場して楽しませてくれました。埼玉やるじゃん。MCのゴルゴ松本も解説者のゲストも、いいテンポで子供たちにからんでいました。いささか手前味噌な番組ではありましたが・・・。 子供たちから出されたアイディアは、実際に番組化して放送されたとか…。 その番組も見てみたいと思いました。
タイトルから「翔んで埼玉」風の半自虐ものかと思ったら、どうして、埼玉の魅力を再認識する前向きな番組だった。出演した子どもたちがいい。文化、歴史など埼玉の魅力を挙げていく目に輝きがある。都会も自然もある埼玉。「インバウンドに最適」と大人が言うと、子どもからすかさず「外から来てもらうのに最適なら、なぜ埼玉には空港がないの?」と鋭い質問が出る。大人はたじたじだ。埼玉の、地味だがなるほどと思われる良さとともに、埼玉っ子たちのよい意味の賢さが、印象に残る。手際よくまとまって、あと味のいい番組だ。
膨大な情報をきっちり整理して郷土の偉人を描いた佳作。単に梅子の人生をたどるのではなく、カメラは現代社会のジェンダーの壁に挑む女性たちの姿も追っていく。この狙いが良かった。わが国のジェンダーギャップを示すデータは未だ厳しく、苦々しく見つめました。一方でそんな欝々とした気分を、エンディングの女性たちの言葉が晴らしてくれます。これも良かった。もう一つ上の賞に届かなかったのは、前半がやや面白みに欠けた印象。それから、梅子と現代女性の2段構成がやや分離した印象でした。梅子の2度目の留学の前に現代を挟む手もあったかも。分かりやすさと面白さという両輪のバランスは難しい課題ですが、次回作はそこを意識して欲しい。
例年入賞の素晴らしい制作局で今回も仕上がりは脱帽です。早い時期から4K制作を実践されており構成や編集も申し分ありません。4K黎明期から審査を担当している私から唯一言わせて頂くと制作体制が秀逸であるだけに期待値を込めてパンフォーカスな画作りだけではなく、制作者目線で切り取る被写界深度を表現するなど、今後是非挑戦頂きたいと思います。完成度が高いだけに観ていて欲が出ますね。機材環境もあるので無理は言えませんが今後に期待します。
これまでコツコツと防災を呼びかけてきた番組の面目躍如。2年間視聴してきた地域の方々は、今回の能登半島地震の時に大変に役立ったのではないかと推察される。何よりも培ってきた取材の厚みに裏打ちされた信頼感があり、防災専門家でもあるMCの説得力含め15分の密度の濃さには驚く。地元局ならではの取材で、1ヶ月後、2ヶ月後と、その時に合わせて、タイムリーで必要な情報をわかりやすく懇切丁寧に伝えていた。このような素晴らしい番組を継続して作り続けていることに敬意を表したい。備えあれば憂いなし。メディアとしての大切な役割の象徴的な番組。
この番組名で何年も続けている事で取材対象の方々が心を許し答えていることが映像を通じて伝わってきます。何よりも防災士である鈴木さんの立ち位置も的確で温かいです。この番組を観ることによって得られる知見や意識は何物にも変えがたい財産です。能登が故郷の私からあえて発言をさせて頂くと、被災した地元の方々は伝えて欲しい気持ちもあるけど大手メディアの荒っぽい取材では疲弊している事も事実なのです。
案内役の大学教授の現場リポートが大変上手。番組後半の船からの道頓堀の橋巡りは楽しめる。東横堀川から始まり下流の木津川までの道頓堀。そこに架かる橋は難波の発展と深い関りがある。関西の交流発電60ヘルツの発祥の地も知れば、芝居に関係が深い木の橋もあれば、戎橋近くのグリコの看板は6代目だという、トリビアの知識も楽しめる。番組前半の大阪湾に流れこむ川の周辺の駅や道路や神社巡りは、多少とも土地勘があればもっと楽しめたろう。番組に挿入された短い地図だけでは、位置関係がもう一つ掴めない。
端的に言うと大阪版ブラタモリ。歴史学者の丸山建夫教授のキャラクターが強く優しい印象を受ける。自ら「ニッチな歴史®」と称して、狭い地域の深い歴史を掘り下げる特異な歴史番組。番組のアプロ―チは今年度から高校で始まった「地理総合・歴史総合」そのものだ。歴史×地理×生活という視点で阪神電車の各駅を巡る。知らんでもええ事が、知ったらオモロくなり、お隣さんとの差が分かり、タメになる。自分の街を知る機会に!
東急電鉄による引退車両「8500」の放出を知った東京さつきホスピタルの石坂さん、諏訪さんが、地域に開かれた精神病棟を目指し、クラウドファンディングによる購入計画を進める様子は、見ている者の心をときめかす。幼なじみでもあるという二人の飄々としたキャラクターが、引退車両で街作りという、ともすれば官僚的になったり、商業的になったりするテーマを、取っつきやすいものにしてくれている。
精神病院の関係者が東急電鉄の引退した車両「850」を引き取る。車両の値段はさほど高くないが、都内の運送代がべらぼうだ。その費用をクラウドファンデングで5000万円集める。若き病院の理事長とその仲間の発想。それに対応する東急車両基地の責任者の姿勢も好感が持てる。なぜ!病院の庭に通勤電車の車両が必要なのか。それは電車の車両を移設した後の電車を取りまく病院関係者の表情、近所の親子連れの表情を見れば納得だ。
引退する電車を購入した人と販売した東急電鉄。8500系ローレル賞を受賞した名車を廃棄せず一般販売に踏み切った初めのケースとして話題になりました。買い取りに名乗りをあげた病院経営者の「電車のある病院」というコンセプトに東急電鉄が賛同してプロジェクトはスタートしたが車軸160万円のほかに修理費、改装、運搬に7000万円が必要となりクラウドファンディングを実施。10月9日のトーキューの日に一般公開するまでを追った番組でした。買い手側の病院経営者のエピソードなどを含めて、新人らしく一直線の分かりやすいつくり方に好感が持てました。
魅力的な導入で、ナレーションも語り過ぎず好感が持てました。登場人物が魅力的で、車両を囲む人たちのいい表情も拾えています。来場者の話も良かったですね。病院という意外な行先にワクワクしながら、やがて胸があたたかくなる好企画です。
*いくつかアドバイスするなら▽インタビューはうまくまとめられていて分かりやすいのですが、内容を深めるために言葉ではなくもう少し実際の映像を拾う努力を!▽ユーチューブは生音を生かしてもっと見せて良かったのでは?▽(ネタバラシになるが)タイトルに「病院」という言葉を入れても良かった。「ハチゴープロジェクト~病院に電車がやってくる(やってきた)~」とか…。今後に期待しています!
ニュースの特集で終わりがちなネタを作品にまで昇華した力量は評価に値する。表層的に鉄道ファン的な切り口で扱われる事が多いネタだが、廃車を文化資産として捉え、ストーリーを紡いだ。8500系は長年、市民に親しまれた電車。通学通勤はもとより人生の悲喜こもごも見守ってきた。ゆえに深く隠れたストーリーがある。当事者の背景にある熱い想い、人生観までをも十分に引き出し、かつ取捨選択して、まとまりある作品に仕上げている。
なんとも不思議な虫送り行事。町から町へと送られる「サバーさま」と呼ばれる藁人形のルートを徹底的に追跡した。この藁人形は一体どこへいくのか?そんな素朴な疑問から始まるのが良いし、その動機を番組で十二分に生かしている。集落から集落へと追跡を始めると、謎解き要素もあり、歴史的解説あり、引き込まれながら視聴した。とにかく追いかけてみるというテレビ的好奇心の基本を忠実に守りながら、地域の人々、生活が垣間見えてくるのは素晴らしい。一点だけ感じたのは、これだけの映像のパワーがあるのだから、それに拮抗すべきテロップやSEは再考しても良いのでは。
行き先も、形の由来も、名前にすら謎の多い伝統行事サバーさま。害虫を追い出す「虫送り」行事の一つらしいが、世の注目度は低い。各集落が、隣の地区から来た藁人形を、集落の逆の境界付近まで運んで置き、それをまた次の集落の人が取り上げて運び、とリレーを繰り返す不思議な伝統。農家の人しか知らないともいわれ、見過ごされがちなこの行事に番組は注目し、追跡した。最後はどこでどんな風に「終点」を迎えるのか。ちょっとミステリー・タッチもあって、文字通り、面白い作品だ。
最初は「作りが荒っぽい!」「なぜ、である調?」「ME(テロップについた音)がうるさい」などとやや批判的に見ていましたが、中盤から終盤にかけて面白さが倍増、ぐいぐい引き込まれていきました。私は若い制作者に大事なのは「?」=疑問・好奇心を持つこと。その力を育てるのは、取材の過程にある「!」=驚きや発見だと思っています。“約1ヵ月、藁人形を追跡する”というこの企画。言葉にすると「ナニそれ?」ですが、粘り強い取材がやがて地域住民や宮司さえ知らない史実を解き明かしていきます。今後も継続して欲しい企画です。その取材が地域の点と点を結んで、民俗文化継承の危機に歯止めをかけるきっかけとなることを祈ります。
殺処分ゼロを目指す動物保護café、人と動物達との出会いを描く。不安そうな猫の気持ちを伝えられるのか。ポイントは撮影にある。人の物語と猫の気持ちを上手にカメラのペデスタル(高さ)で使い分けている。動物写真家・岩合光昭氏のいわゆる「猫目線」。やがて猫たちも自分と同じか低い目線のカメラに対して心を開いていく。取材者の想いが明確な画づくりになり、視聴する側も自ずと課題に引き込まれ、考えさせられる作品だ。
局の良き先輩に支えられてこの作品が新人賞部門に残るべくして残ったのは腑に落ちます。周りのバックアップ体制が整っているだけに羨ましくもあり、微笑ましい限りです。動物相手に長期にわたる取材は大変ですが4K審査から始める私の立ち位置から言わせて頂くともう少しカメラが落ち着くと安心出来るし大画面で見ても安心です。4K収録ならではの猫ちゃん達のモフモフ感はさすが4Kの優位性ですね!今後取り組みに期待します。
へき地校の消滅が集落の更なる衰退に拍車をかける。そういった番組を繰り返し見てきた。ところが、この番組は学校が亡くなるまでの一年間、どうやって楽しい思い出を残せるか。全生徒14人と先生が知恵を出し合い、楽しみを季節ごとに見つけ実行していく。14人の生徒の溌剌とした頑張りに、両親も村人全員も協力、参加する。その陰りのない元気さが逆に、視聴者には間もなく限界集落の中心である核が抜け落ちていく、ことの意味を感じさせる。やさしい声の年配者の語りが、心に染みる。
※この60年間で全校の小学校の数は、2万校が半分以下の9千校台になった。
まずは、学校の黒板がナレーションを務めるというアイディアは秀逸でしたね。このナレーションはどなたが担当されたのでしょうか。1年生から6年生まで14人の小学校の閉校が決まった1年間を記録した番組で、新人らしく変にこった作り方をしていない点を評価したいと思います。地域の人々とのつながりも豊かで、学校行事も少人数の生徒の手で実施されていましたし、大きな気球に乗って自分たちの町を眺めるイベントは住民たちから子供たちへのプレゼントというのも、地域のみんなで子供を育てるという意識を持つ住民の心意気が素晴らしいと感じました。3月14日の卒業式をかねた閉校式の映像には思わず涙しました。
独特の色あいの伝統工芸品「伊賀くみひも」。その1本の組紐ができるまでにどれだけのプロセスがあり多くの職人技が支えているのかを丹念に描いた佳作。職人技の継承が難しくなり衰退に向かう伝統品を若き染色職人平岡さんが継ごうとする。その高温多湿の作業室での奮闘する姿、教えるベテラン職人たちの佇まい、どれもが心に残る。平岡さんの後継者としての覚悟も伝わってきた。何よりも、糸の色の美しさ、微妙な色合いの表現は圧巻だ。欲をいえば、ナレーションが少し多すぎるのが気になった。特に、心情を代弁するようなコメントは不必要な気がした。
撮影は基本に忠実に行われている。インタビューのサイズの切り方や背景への配慮などがなされており画づくりは安定感がある。動きのある作業風景も上手に追随し、染色工程や細やかな作業を映し出している。一方、この題材で4Kの特徴を一層生かすならば、空気感とディティール表現で工夫ができよう。ボケ足の良いシズルある画や色味の繊細な違いを見せるグレーディング等を駆使し、動と静を上手に表現することで完成度は増す。
この賞が新人賞部門から出たことはとても賞賛に値します。糸の質感から朱鷺(とき)や浅葱(あさぎ)、茜(あかね)や群青(ぐんじょう)など日本独特な色調をうまく4Kの色域で再現出来ています。この様な分野を高精細な映像作品で残して頂いたことに心より謝意を申し上げます。機材構成も、最新のトレンドとスペックを押さえていて、この機材とレンズだからこそ撮り得たと痛感しました。この制作環境を用意して頂いた上司や経営陣の皆様にも敬意を表します。
写真をクリックするとプロフィールをご覧いただけます。
【一般社団法人 日本ケーブルテレビ連盟 コンテンツ&HR推進部
】
〒104-0031 東京都中央区京橋1-12-5 京橋YSビル4F
tel:03-3566-8200 fax:03-3566-8201
jcta_contents-lab@catv-jcta.jp