今回審査した作品のクオリティが総じて高かったということをまず報告をさせて頂きます。審査員の方々から作品の水準が上がったという声がございました。
考えてみますと、この10年くらいの間にケーブルテレビの番組のクオリティがとっても上がったのだろうと思います。これは日本ケーブルテレビ連盟がすごくコンテンツに力を入れてくださった、おかげだと思います。個々の作り手がそれに応え、自分たちの作品をこのアワードにとエントリーしてくださったことがうまく回ったと思います。
しかしながら、現在コミュニティ部門とコンペティション部門と新人賞部門に分けていますが、コミュニティ部門とコンペティション部分でやや重複するところがあるのではないのかとも思います。そのあたりのところは少し気になるところがございました。
ただ、1本1本の作品の持っているクオリティが上がってきていることは確かだと思います。審査員の方々から目線を低くしっかりと対象を取材し、クオリティに結びついている所が良かった、愚直に撮り続けたものに心を動かされる作品がたくさんあったとの声がありました。最優秀新人賞、準グランプリ、グランプリの3名の受賞者のコメントにもありましたが、やはり撮り続ける、取材対象者、取材の地域と向き合ってじっくり撮るということが良い作品に結びついていると思いました。
NHK国際放送局の田中局長からのお話にもありましたように、まさにケーブルテレビの現場は、取材から編集、送り出しまでを本当に少人数で行い、場合によっては本当に一人で作っているところもあるかと思います。であるがゆえのその目線の低さというものが作品に伝わっていると思います。私も非常に強く感じたのは、グランプリ作品が典型だと思いますが、ある特定の人物やある特定の事象というものについて長くしっかりと撮り続けること、そのことは個人史を追うことになるわけですが、個人史を追うことによって今の社会の変化や動きというものを提示することになったのではないかと思います。
これはNHK World Japan賞を受賞した作品や準グランプリのカイコと子供たちを撮り続けるということも同じなのではないのかと思います。つまり、撮り続けることによって、目の前にあり非常に具体的な事象が社会全体の変化ということを問うことになっていく。そこがケーブルテレビらしい、 ケーブルテレビらしさだなと強く感じました。その意味においても、このアワードにケーブルテレビらしい目線の低いしっかりとした作品が集まる。集まったことによって、他の地域でどんな作品が作られているのか、どんな取り組みがなされているのかということを共有できることがとても素晴らしいと思います。
今回、本当にとても良い作品が集まったと思います。ぜひとも来年、また私たちをドキドキさせて頂きたいと思います。本当に受賞された方々、それからエントリーして下さった方々、そしてそれを支えてくださったケーブルテレビの方々、本当にどうもありがとうございました。
(9月8日贈賞式檀上でのコメント)
「ジャズ喫茶文化」というのは、日本特有のポピュラーカルチャーらしい。最期までジャズ喫茶のマスターとして振る舞い、その生活スタイルを貫いた神谷年幸さんの姿を、畏敬の念をもって撮り続けた作り手の姿勢をまず評価したい。映し出されるジャズ喫茶「グッドベイト」には、マスターである神谷さんの生き方そのものが詰まっていることがよくわかる。また、それを理解し、放任している家族や周囲の人たちの愛情も伝わってくる。神谷さんの暮らしの流儀を支えた周囲の人たちの暖かさを含め、神谷さんの個人史を映像で振り返ることで、戦後日本のポピュラーカルチャーを支えた市井の空気を感ずることができる。
主人公が亡くなった後の回想シーンが秀逸。奥様がソファーで、最後の出演になったラジオ番組を聞き、メモ用紙に残された遺書とも云うべき感謝の言葉を握りしめ、亭主と営んだ店の半世紀を振り返る。死後再開されたジャズ喫茶に各地から集う人々。この場所がジャズ愛好家のオアシスであり、番組制作者もその一人であったかもしれない。時代背景と地域の特徴を色濃く滲ませた「ある人生」の秀作である。
これが銀座のジャズ喫茶だとそうはいかない。このような主人公も育たなかったであろうし、全国にファンを持つ多と云うが、ファンの種類も違っていたであろう。
これは本当に壮絶な人生のドラマだ。死期を覚悟しきったマスターと、その奥さんのどアップの映像が迫力満点に迫る。そんな映像を撮り続けられたということは、それだけ取材者に対する信頼が厚かったということの証しに他ならない。ケーブルテレビならでは、と思わせてくれた。
「人生は大変だけど悪いことばかりじゃない」というマスターと、「幸せだったと思うよ」という奥さん。まさに命の燃焼を描いた物語であった。
贈賞式のあとの上映会で改めて作品を視聴し、この作品をグランプリに選んで本当に良かったと思わせてくれた。ありがとうキャッチネットワーク。おめでとう上西将寛くん。
神谷さんの笑顔、声、言葉、背後に聞こえるジャズ、そしてジャズ喫茶「グッドベイト」の空間。放送から時が流れてもそのすべてが人々の記憶として残り、切なくも心に生き続ける番組だ。
今回、カメラが立ち会ったのは、神谷さんの最晩年のほんの短い時期に過ぎないかもしれないが、その時間には71年の人生が凝縮されていた。神谷さんと取材スタッフとの関係が生み出したこの濃密な時間をたっぷりと堪能させてもらった。スタッフに敬意を表すると共に素晴らしい番組を届けてくれたことに感謝をします。
「人生は大変だけど、悪いことばかりでもない。」
世の中的には、まさに「GOOD BAIT(だれも知らない隠れ家)」と呼べるような小さな町のジャズ喫茶のマスターとして、生きて、死んだ一人の人間を淡々と描いた。
バックに流れるジャズ、マスターの神谷さんの飾らない語り口と笑顔、妻や常連客たちの温かさがほどよく調和し、上質のコーヒーを飲み終えたようなあと味の作品。
明るさを保ったマスターの人柄が本作品の成功の第一の理由だが、制作者と神谷さんの信頼や共感の深さが自然な映像に帰結したことが、第二の理由のように感じられる。
「俺の葬式まで撮ってください」マスターは笑顔で語りかけますが、制作者にとって決して簡単なことではありません。その約束を丁寧な仕事で果たした作品です。何かに疲れた人、なんとなく一人になりたい人、自分が落ち着く場所を見つけて身を置く人…様々な理由で集うジャズ喫茶GOOD BAIT 。そんな隠れ家を舞台に番組は進行します。マスターの人柄や選曲の力もあると思いますが、死に向かっていく番組なのに全編に温かで軽快な空気が流れています。マスターと関わりこの空間に触れた人がうらやましく思えてきました。そして制作者の思いがこもったエンディング。アニメーションも効果的でした。心に残る作品をありがとうございます。
「神谷さん」に出合った時点で、凡そ番組の使命は半分以上果たしたのでは、と感じた。普通の、面白い、でもちょっと変わった発想と思考を持つ尾張弁のおっさんと正統的なジャズ喫茶。しかし、残りの半分は取材者の努力の賜物であると。
日参と粘り、関係構築、気負わない姿勢、問いかけの勇気、神谷さんが語る一言をじっくりと待ち続けた根気。あっという間に過ぎた60分の構成も奇を衒うことなく、しかし不意と驚きに満ちていた。
どうしても自分と重ね合わせてしまい、評価としては不適当な位に前のめりで拝見しました。個人的には昭和40年代にスイングジャーナル誌を抱いて上京して神保町や新宿界隈のジャズ喫茶を制覇していました。資料映像に出てくるお店は全て当時入り浸っていたお店です。マスターは僕より少しお兄さんの店主で、奥さんの愛に支えられ生涯を閉じられた事に羨ましさを感じます。
優秀な制作陣に支えられた仕上げで、編集と音処理は丁寧でオリジナル盤のスクラッチ音が入った音源の使い方は素晴らしい!イラストも素敵でした。
長野・七二会小学校の2年間にわたるカイコ学習の取り組みを追い続けたところがこの作品の強みである。すでに地域の過去の歴史となってしまっている養蚕業だが、カイコ学習によって体験的に地域に触れることで、子どもたちが自らの地域の歴史と文化が身近なものになっていくことが見事に描かれている。作品の冒頭で、カイコを気味悪く思っていた子どもたちが、2年間のカイコ学習を通じて、カイコに対する愛情が生まれていく過程が、丁寧に映像化されているところに説得力を持つ。地域を学ぶことの面白さが伝わってくる作品だ。
養蚕がムラの産業だった山村の小学生が自分たちで蚕を育てる話。3・4年生併せても、たったの3人。自宅でふ化させた幼虫を学校に持ち寄って廊下で飼育、1日4回桑の葉を与える。桑を食む音がまるで雨が静かに降り注ぐようだ。1か月飼育すると4回脱皮し、五蠣になり体が透明になると糸を吐き、2日間で繭を作る。しかし、ここでは繭を作らせず竹の骨に這わして絹の団扇を作る。そのしゃれた団扇をムラ人が買い求め、昔を懐かしむ。小さい生き物を責任もって育てながら故郷の歴史を学ぶ小学生の姿が好ましい。
明治から昭和にかけて養蚕が盛んだった長野市西部の山あいにある七二会小学校の3・4年生がカイコを飼育。2020年度の3年生3人がカイコを飼い始めてからの2年間を記録した作品で、平日の夕方に放送しているニュース映像を番組化したもの。
先生がカイコの卵を各家に配布するところからスタート。子供たちの家で生まれたカイコが学校へ。3・4年生が桑の葉を与えて育てる。やがてカイコがマユをつくる。カイコの成長とともに子供たちの成長も見られれる。
エンディングの部分の子供たちのモノローグが効果的だった。何よりもこの作品が新人賞部門から選ばれたことを高く評価したい。
豊かな自然に囲まれた全校生徒26人の山間の小学校を舞台に、みずみずしい傑作番組が誕生した。丁寧な取材により描かれたコロナ禍での3年生3人の成長とカイコの生態が織りなす2年間の記録には心をうたれ、深く伝わるものがあった。
3人の子供の日々の気づき、過疎の小学校生活、山間に暮らす人々、背景にある村の養蚕の歴史、誕生から死までのカイコの一生、ひとつひとつのシーンに発見があり、制作者が素直にそれらを子供たちと共有していくプロセスがケミストリーとなり視聴者に届き、この番組を豊かにしているのだと感じた。新人ディレクターとして、次作が楽しみです!
地域産業としては失われたカイコを、地元の小学校の3,4年生が育てる。学校のその取り組み自体に、まず「へえー」という驚きがある。丹念な撮影で2年間の作業を追い続け、カイコの生態を子供たちと一緒に経験していった映像も、新鮮だ。
最初は「ただの気持ち悪い虫」と言っていた子供たちが、カイコの口は2つ、呼吸口は体側にあり、桑の葉を食べてグングンという速度で成長することを知る。2年後の作文に子供たちは「命と死」を書き、カイコに愛を抱く、その自然な変化が感動的だ。
根気よく記録し、子どもたちの豊かな表情をしっかりとらえていました。ニュースの短い枠を前提に取材をするとどうしてもインタビューやナレーションに頼りがちですが、この番組は生音を効果的に生かして描写に厚みを持たせていました。「カイコは死ぬから(その分)うちわを大切にする」こんな風に学びを表現する子どもたち。その変化・成長を目撃できるのは家族や地元の人にとって大きな喜びです。あえて申し上げるなら、インタビューの技を磨き構成力を身に付ければさらに表現の幅が広がると思います。「だるいが楽しいに変わった」と語った依愛さんのようにディレクターも番組作りを楽しめたでしょうか。太田さんの今後が楽しみです。
お蚕さんは生まれて、そして息絶えるまで糸を出す。その糸を紡ぎ、布で人々は生きている。生と死、蚕と人間。とても重要な問いかけを小学生の2年間の記録を通して語りかけてくる。
初めは蚕を怖いと言った女の子、次第に可愛いと言うが、いずれ長きにわたって育てた蚕の死に向き合うことになる。子供たちにとって自然な問いかけ、丁寧な、しかし一定の距離感を保った取材姿勢など、新人を逸脱した取材・構成の出来を高く評価した。
番組タイトル通り、命を紡ぐ事をカイコと過ごすことで命と向き合いを取材すると言うテーマとしては恵まれた題材だと感じます。命を頂いて生糸が出来る過程をうまくとらえています。
インタビューされている子供たちのコメントが時間を追うごとに変化している事に取材者も気がつき、帯のニュース枠での取材と言う事だが、良い切り取りで膨大な取材素材からうまく編集していると感じます。新人賞部門への応募ですけど、周りの制作陣に支えられていると感じられ、好感が持てるし是非これからも地域の題材を追いかけて欲しいです。
何度でも見たくなり語り継がれる名作。立山黒部アルペンルートの除雪作業の一部始終を撮影した貴重で壮大な映像は文句なく感動する。構成要素はアルペンルートと大型重機と作業員13人。
過酷で超大な大自然のなかでは、もはや人も重機も区別はない。一体だ。この大自然に放り込まれた作り手の体感がそのまま この映像作品のスタイルとなり、見事に結実した。そのスタイルがあってこそ、見終わったあとに、大自然の中で、営々と続いてきた雪との格闘、それを切り開く人間の叡智、作業する人間の誇りが、強く心に残る。
困難な取材を敢行した4K取材陣に最大のリスペクトを送りたい。
「高精細で綺麗」の時代から4K番組の評価は大きく変わってきた。当該作品は空気感の描写、没入感、視力相当の精細さを用いた描写などを十分に駆使した番組の一つである。
ナレーションを排除することで、視聴者は傍観者でなく画面の中の人になる。撮影機材の選択ときめ細かいカラーグレーディングにより、シネライクな質感で心の没入もいざなう。劇場で見たらどうなるか?ビデオライクならばどうなるか?試行してみたい題材でもある。
4K部門が廃止されてある意味、その呪縛から解放された模範的な制作例と感じます。
4Kだからと言う気負いもなく、本当に良い映像を安定して落ち着いたカメラワークで切り抜いているので安心して視聴できました。特筆すべきは、広大な立山黒部の映像をうまく処理してパンフォーカスな映像で気持ちがいいです。大画面で見てもとても気持ちが良いです。地域メディアの強みを生かした取材体制で見応えがありました。
編集も丁寧だし仕上げの音バランスも素晴らしいです。審査会でどれも音バランスが悪いといつも言っているのですが、この番組はそんな不安を払拭できる秀作です。
「秋田美人」というコトバの由来とされる川反芸者の文化と歴史を、映像で丁寧に紐解いていくわけだが、特に、日中戦争のさなかに、中国戦線で戦う秋田出身の日本兵の慰問のために派遣された8名の川反芸者による「くれない部隊」の足跡とその時代の空気を、ドラマも交えて再現したところは見応えがある。ロシア軍のウクライナ侵攻など、きな臭いニュースが続くなかで、タイトルを「忘れられた恤兵」とするなど、歴史を振り返りながらも今日的なメッセージを忘れない制作者の姿勢を感じた。ドラマ部分でのわらび座の起用も心憎い。
従軍看護婦として戦地に赴いた女性を描いた「別れの乳房」に続き、地域の知られざる戦争体験を丹念な調査で掘り起こした労作。川反芸者「くれない部隊」の北支慰問行を資料で現代に蘇らせた。慰問部隊調査の過程で浮かんできた「恤兵」という言葉とその仕組みから日本の同調圧力なる空気を明かしていくプロセスは見事である。
ただ、番組の構成として意図は十分にわかるのだが、川反芸者慰問の話と「恤兵」が団子に感じられてしまう可能性を否定できず、もう一工夫、あってもよかった。個人的には、それでも、「恤兵」をこの番組後半にぶち込んできた制作者たちの時代への切迫感が強く感じられ瑕疵だとは思わない。
秋田の芸者8人による中国戦地慰問団「くれない部隊」を、丁寧に掘り起こした。
芸者たちの傷病兵見舞いや、列車から沿線の兵士に「秋田ぁ」と叫ぶ再現映像も交えつつ、当時の日記『北支の旅』が骨格を支えて実証性、リアリティが保たれ、兵と送る側の切なさが胸に迫ってくる秀作だ。
戦地と銃後の人間を情でつなぐ「恤兵」は、下からの戦争動員だったという制作者の視点はその通りだと思うが、その「情」には、さまざまな複雑な思いが混じり合っていたことを考えさせる。戦争のこういう振り返り方もあるのかと気づかされた。
川反芸者の説明部分などがやや長すぎて、作品の凝集力を損なっている点は、惜しい。
太宰府の人気スポット・宝満山を登る大量のカエルたちを、カメラ目線を低くして、じっくり丁寧に追いかける映像は圧巻。宝満山の自然が見せる様々な表情と、一生懸命山を登る愛嬌あるカエルたちの姿には、思わず引き込まれてしまう。物腰柔らかく語り合う二人のナレーションも、作品にいい味わいを加えている。カエルに魅せられた「宝満山ヒキガエルを守る会」の人たちの表情もいい。
動物・鳥・昆虫など生き物の取材が大変なのは言うまでもありませんが、そこに3年越しで挑んだ意欲に頭が下がります。描くのは小さなカエルの命がけの登山と、彼らの姿に魅せられた人たちが作る特別な世界。普通に考えればヒキガエルに感情移入はしづらいものですが、見守る人たちの柔和な顔やよく練られたナレーター2人の語り口がしっかり没入させてくれます。吉永さんの「未知のものに対する探究心(があるから撮る)」「これはナニ?(という好奇心)があるから生活に張りが生まれる」といった我々クリエイターに対する金言も随所にありました。足元の小宇宙に目を向け、そこから世界を広げて様々なことを教えてくれる秀作です。
生き物を題材にする事だけで脱帽します。この題材を追いかけることをスタッフに用意できた同局の制作体制に敬意を表します。カエルが登山をするなんて初めて教えてくれたこの番組は良いですね。構成も優しくて男女の掛け合いナレーションもとても柔らかくて好感が持てます。一気に見終えましたが、なぜ山頂を目指すかはまだ分かっていないのですね。可能なら同局のライフワークとして取り組んでいただいて、続編で教えてもらいたいと思うくらい秀作です。
これまであまり見かけなかったオンラインで世界を結ぶ企画で、様々なアイデアが盛り込まれて飽きさせない。まさに今どきの企画を評価したい。3時間特番のダイジェスト版だが、手作り感満載の生番組で楽しませてくれる。何より進行役が達者だ。
日本各地、世界各国の岐阜県人をオンラインで結ぶという手法は、どこのケーブル局でも真似できることだと思う。
また、単に番組としての評価にとどまらず、地元の岐阜新聞とのコラボや、スポンサー企業との協賛でも成果を上げたことで、ケーブル・アワード2022ベストプロモーション大賞でグランプリを獲得した、その企業活動も併せて評価したい。
リモートで手軽につながるのはコロナ禍で得た数少ない恩恵。そこに目をつけ活用した生番組は、会いたい人に会えないちょっと寂しい元日に楽しくにぎやかな風を送り込んだ好企画です。花火で派手に祝うブラジルや台湾の年越し、リトルトーキョーからのリポート、久しく聞くことができなかった郡上節など、世界各地の岐阜県人から元気をもらった人は多いはず。Zoom、YouTube、Twitterなどを活用する一方で、手巻きのスポンサー紹介など遊び心が効いています。MCの久世さんも軽快な仕切りでした。出品作は3時間番組を1時間に再構成したものですが、審査の席上「尺を詰める際の編集の粗が目立つ」という声があったことを付け加えておきます。お疲れ様でした!
なぜコミュニティでなくコンペ部門なのか?これは視聴冒頭での感想だ。しかしそれはいつしか覆された。TVの可能性、地域メディアの在り方を真っ向から提案した内容はコンペに相応しい。相反する思考の「Global×Local」「手作り×IT」の相乗が至る所にある。MC久世さんのキャラが視聴者との絶妙なブリッジとなり、かつ世界同時オンライン郡上踊りが岐阜県人の心を一つにした。演出は粗くとも“意味のある”コンテンツであった。
サッカーが今ほど盛んでない時代、甲子園をめざす高校野球は、何といっても青少年スポーツの花形だった。地方の代表になるだけでも地域の誇りだった。かつて甲子園出場を決めた函館大有斗の元高校野球児、年齢も職業も住所も、今は様々な仲間が再び集い、いっとき青春に戻りチームを結成する。ポジションも監督もコーチも自ずと決まるのであろう。地域の予選を勝ち抜き再びあこがれの甲子園の土を踏む、その感激が伝わってくる。
試合終了後、通路を退場する全参加選手の姿に校歌が流れ 全員の名前がクレジットされるエンデイングのシーンがこの番組を象徴している。地元ならではの好企画であり、地元愛に溢れる視点に満ちた番組。
甲子園の晴れ舞台までのプロセスは、OBの内藤さんと小林さんが、その野球背景も含め、うまく軸となり構成されていて、一緒に球場までいくような気持ちで見ることができ、入場シーンは共に弾む気持ちになった。
ひとつだけ、欲をいえば、「おじさん」の代表でもある内藤、小林両名に、もう少しだけ踏み込んでも良かったのではないかと思う。
番組を見ての感動にも様々な種類がある。この番組は大震災後に復活した地域の食産業の新しい工夫を、総力を挙げて応援する地域メディアの姿勢が好ましい。それは食の第一次生産者ばかりでなく、消費者をつなぐサービス業、付加価値が高い加工品づくりなど、食に関する新たな総合力を展開する。
東日本大災害後、世界の食産業の新しい動きを学んだ若い指導者を中心に、時代の動きに合わせた食産業を育てる運動を展開し、食の(1次×2次×3次=6次産業)を活性化する。番組に登場する人物が、リポーターのAKB48出身者も含めて、話が簡潔で上手である。地元産業の美点を見つけ徹底的PR。これも地域メディアの大きな役割である。
東日本大震災11年の復興を、「食」の面から見渡して、わかりやすい特番になった。閖上港の朝市、仮設蔵から再建した酒造店、新しい食の総合リゾート、農業・飲食業・小売業を横断する試みなど、話題も豊かだ。震災後、農家の有志らが農業先進国を回り、ITハウス栽培などの新しい技術に触れて日本農業の「伸びしろ」を感じた、という話も示唆的だ。
元に戻す「復旧」も大切だが、焼け跡から立ち上がった戦後日本のように、ゼロからリセットする利点を生かすことも大事だと教えられる。
俳諧=連句について知識が浅い私は「五月雨をあつめて~の松尾芭蕉の句には続きがある」というセリフに冒頭から引き付けられました。その後の演出面では芭蕉さんの生涯を伝える紙芝居の使い方がうまく、福北辨さんの味のある語りに聞き入りました。市民グループから小学校への展開もテンポよく、何より子どもや初心者にもわかりやすい飽きさせない構成が巧みです。愛好家が「俳句と連句の違いはグランドゴルフとゲートボールの違い」「連句はチームプレー」と語るように何人かで一つの作品、一つの世界を作り上げていく連句の面白さと奥の深さを知ることが出来ました。“難しいことをやさしく、深いことを面白く”伝えてくれた作品です。
コンペティション部門に出して頂くにふさわしいと感じられる番組です。拝見していて流れは良いし、全体に妙な気負いもなく好感が持てます。伊賀市は松尾芭蕉の生誕地あることを色々な視聴者に知らしめるいい機会ですね。登場する学芸員さんの芭蕉愛が肌で伝わってきます。4K制作とありますが、編集の流れが良く良いですね。同地区の伊賀市にとっても良いライブラリになりましたね。ナレーションのバランスだけ一考頂ければ完璧です。次回作も期待します。
個人的には今年のグランプリ候補3作品のひとつに挙げた作品で、NHK WORLD-JAPAN賞も授与されたことを喜ばしく思う。
玄界灘に浮かぶ松島で、グランピングを始めるという若者を3年かけて密着取材。その若者だけでなく、帰島した若者たちが彼を応援し、さらに周囲の大人たちも理解を示す。
島での生活が楽しいという若者たちが実に頼もしい。「未来のために稼げる島をつくりたい」というチャレンジ精神。素晴らしい若者たちに乾杯。ぜひ続編を期待したい。
ドキュメンタリーには強いメッセージ性が不可欠だ。しかしこの作品には特有の押しつけがましさがない。そこには「やわらかな構成」が存在するだけである。視聴者は自然体で番組に向き合えば、ありのまま、取材対象者の言葉や想い、地域の課題やハードル、行く末の心配等が頭の中に入り込んでくる。 構成・撮影・編集・語りの1人4役であるからこそ、島人と取材者との一体感と距離感を絶妙に采配する田中Dの力量とも言える。
地域ニュースハイライト。真備川氾濫の被災地を地元タクシーが循環ツアーする。女性運転手と記者との掛け合いで被災地が抱えるその後の課題を的確に指摘する。車体を失ったタクシー会社に同業他社からの車の援助。女子バスケチームのたった1人の男子部員のコロナ禍での話。玉野市長選挙の的確な情報。珍しい客車を保存するクラウドファンディング。地元選手の五輪での活躍。148年間続いた小学校の廃校式、生徒と先生、集落全員が共に歌う校歌の響き。ニュースの断片に地域の喜怒哀楽が見事に綴られている。
本番組を視聴しながらメディの役割と信頼ということを考えさせられた。まず落ち着いた安定感のあるスタジオとキャスターが、このニュース番組の信頼を担保している。
そして今回、拝見した特集7本(及び新人賞応募のコロナ影響の2本)は、企画力、取材力、タイムリー性など、どれもが大変に優れていて見応えがあり、地元メディアの役割を十二分に果たしていると感じた。これほどの特集を日々見ることができる地元の視聴者が羨ましくもあり、また、地域のメディアとして、これだけのニュース番組を地元に送り出すパワーには圧倒された。その裏には、多くのスタッフの多大な日常の積み重ねと努力があると感じられ、敬服した。
地域にとっての地域メディアの在り方の一つの答えがこのKCTニュースにある。
ケーブル局ならではの取材の丁寧さ、長期的視点、小さなネタの拾い上げはもちろん、報道番組としてのメッセージ性が強く感じられる。取材者も取材対象者も同地域内の生活者である事を忘れず、どんな見方がより良いか、どんな描き方がより分かりやすいかを徹底的に貫いている。インターン生によるレポートの取り組みも先進かつ挑戦的で高く評価できる。
香南っ子たち、相変わらず元気だなと嬉しくなった。香南市の小中学生有志の「映像倶楽部」の活動記録だが、今回は特に見ていて楽しい。
コロナ感染者差別をなくそうというシトラスリボン活動が第一部。第二部は祭りを子供たちが手伝う記録で、これが面白い。コロナ下で考え出された「ドライブスルーで夏祭り」の企画の一部を任された倶楽部メンバーは、幼児が喜びそうな遊びを考え準備に汗をかく。寄付集めのお供もする。ところがコロナ急増で祭りは急転中止に。それが再逆転し10月実施が決まる。
山あり谷ありの現実の経緯が作品を動的にした。子供たちのひと夏のドラマが微笑ましい。
視聴者巻き込み型の好企画です。コロナ禍で停滞しがちな地域社会の交流にひと役買って、今回は特に充実した内容でした。「シトラスリボンの拡大方法」をはじめ、子どもたちに教科書にはない貴重な学びの場を与えていますが、中でも「ドライブスルーで夏祭り」の近藤さんの存在が大きい。寄付金への働きかけやお礼状といった、イベントに参加するだけでは分からない舞台裏を体験することで、香南っ子は大人の振る舞いや社会の仕組みを知り、地元に愛着を持つきっかけになっています。この番組が地域に活力をもたらしていることは言うまでもありませんが、次世代のリーダーを育てる大事な役割も果たしているのではないでしょうか。
香南っ子映像倶楽部と言うケーブルテレビ局と地場の自治体が共同で立ち上げた仕組みにとても興味がわきました。もちろん局の制作担当者の温かい目線がそうさせるのは言うまでもありませんが、この倶楽部を運営して子供たちが楽しそうに取り組んでいるところが本当に微笑ましいです。扱っている内容はともかく、子供たちがこの倶楽部に対する熱意とか一緒に作りたいと言う熱気がとても好感が持てます。
特筆すべきは今回のナレータを務めた中学生の春日井さんはすごい!この活舌の良さを他局の制作陣にも見習って欲しい。局のトレーナーに愛があるのか子供たちの熱意なのか分かりませんが、とてもいい仕上がりです。
こうした事件または事故をケーブル局が取り上げることは珍しい。そのチャレンジ精神を評価したい。この作品を審査した時期は、ちょうど遺骨が発見された頃だったので、元気な美咲ちゃんの映像が痛々しい。
行方不明当時の模様を母親とともに再現したり、山梨県警の話を聞くなど、2年間の記録が基調だ。母親への誹謗中傷などひどい出来事が続くなか、とにかく美咲ちゃんを発見したいということを主眼とした番組づくりには共感できるものがある。
先日、山中で発見された人骨がDNA鑑定で美咲さんのものだと判明した。
その遡ること半年前の放送で、地元でおきた女児行方不明を風化させてはならないというスタッフの強い思いのもと長期にわたりメディアとして報道し続け、本番組が制作された。行方不明となったキャンプ場での経緯説明は、丹念な取材により、大変にわかりやすく(人骨発見時に幾つかの報道を見たが、そのどれよりも抜きん出ていた)時が経ちニュースに取り上げられなくなるなか、情報呼びかけという大切な役割を担ったことは特筆に値する。取材者として家族にきちんと向かい合い、SNS被害、報道、家族のありかた、そしてその背景にある現代社会までを描いた力作。
「ケーブルテレビは、災害は扱うのにどうして事件・事故は掘り下げて報道しないんだろう」とこれまで疑問を抱いていました。地域の人々の幸福度を上げるには事件の報告・検証もあっていいのでは…そんな思いの中で遭遇した番組です。美咲さんの行方不明が事件なのか事故なのかまだ分かっていない段階の取材ですが、初公開となるキャンプ仲間とのLINEのやり取りや、これまであまり露出が無かった美咲さんの祖母や学校へ通えなくなった姉の心情が胸に深く刺さります。家族との信頼関係あってこその取材です。コロナやオリンピックでメディアの報道が減っていく中、あるいは母親1人が注目される中、こうした記録を報じた意義は大きいと思います。
昔の日本、障害を持つ者の一つの生き方。片目が見えない上、知的障害もあるが。優れた音感で、一本三味線での門付けで生き、道化役を演じる。祭りなどの賑わいや様々な集いに裸に近い姿で現れては太鼓もたたき「カックンちゃん」とムラ人から呼ばれ愛された、一種のトリックスターだ。集落の20人余りが語る「カックンちゃん」の思い出話がいかにも懐かしそうで、異質を認める人々の心の幅を感じる。少女の頃は怖かったとも語る老婆の表情も、なんと和やかなことか。お礼の「おにぎり」に自ら泥を塗って食べる奇行。その泥に着いた農薬で死亡する。
異色の作品だ。カックンちゃんを知る人々の語りだけでほぼ構成する作りも、作品がカックンちゃんという人を対象としたことも。制作者の心意気を高く評価したい。
大正から昭和前期に、佐賀で門づけをし、ふんどし姿で一本三味線を弾き、夜はお堂の下に寝た。知的障害があったという。そのカックンちゃんの思い出はさまざまだ。「子煩悩」「優しい人だった」の一方、「怖かった」という女性もいる。「今だったら怖がってだれも寄りつかないでしょうね。平和ないい時代だったんでしょうね」と言う人もいた。
人権の点で「遅れていた」と見られる以前の社会の方が、むしろ「包摂力」はあったのではないか。そう考えさせる意欲作だ。
たった4枚の写真だけで物語を成立させた力量を評価したい。
おそらくこの先数年で証言者がいなくなってしまうことへの危機が、ルポルタージュ精神に火をつけたのか。30人に及ぶ「証言」は民俗学的な史料としても価値があると思われる。証言の内容や語り部の表情により、目の前には存在しない「カックンちゃん」が、虚像として浮かび上がってくる。
惜しむらくはテロップのデザイン。素直かつ丁寧なテロップワークで完成度は高まる。
地域に眠っていたフィルムを再生することで、当時の文化や人々の暮らしを見つめ、その歴史の記憶を再現するというケーブルテレビらしい活動。正月特番ということもあってか、取り上げたお宝映像の内容は大正期の製糸王国・須坂の繁栄の姿や1970年代のカッタカタまつり、臥竜公園の歴史、地元出身タレントの若かりし頃の映像など、やや大きな物語や著名人の姿などを扱ったものが多かったが、今後は、市井の生活風景の映像も掘り出し、地域の記憶を再現していただきたい。ケーブルテレビが地域の映像アーカイブスとして展開できることを示した作品といえよう。
地域に残るお宝映像を発掘て紹介するという行為そのものが評価に値する。古いフィルムやテープを再生るためデジタル化たり、地元の蔵に特設スタジオを設置したり、さまざまな工夫がみられ、MC2人の進行も落ち着いていて心地よい。
忘れてはならない古い伝統などが映像として残っているのは貴重なことであり、それを残して行くこともケーブル局のひとつの役割であるといえる。
ある古い家のお宝映像を、3世代の家族で見る姿に感動させられた。
ベテランキャスター相本氏とお笑いタレント「雷鳥」の2人が、クイズでは対決しながらも仲の良さがほのぼのと伝わって来て、飽きることがなかった。高岡、射水2つのケーブルテレビ局が合作する意義を示した。
クイズの中身も、クイズのためのクイズといった無理なうんちく型ではなく、両市の曳山祭りをクイズの中で自然に知っていくことができる、よくできた娯楽番組だ。
250年前の曳山騒動が、隠された乗り越えるべき出来事らしいが、それを詳細に説明しない手法は、むしろ洗練されていると感じた。知りたい人は調べればいい。
ケーブル局の強みが最大限生かされている内容で見応えがあります。
時間と予算の事もあるかと思いますが、スタジオの開き方が少し乱暴で気になりましたが、隣接する両局のライブラリと知見がフルに生かされています。個人的には両局エリアに県境で隣接している出身なので興味があり、これらのお祭りにもたびたび出かけているのですが、知らないことだらけで感服しました。一気に視聴できる流れで良い編集ですね。ムービー紹介の所は、お祭りの同録音をもう少し立てて聞かせてもらえるともっと良いかと思います。これからも地域文化に根差した取り組みを期待します。
100年前にけん玉が初めて作られた地とされる広島・廿日市の魅力を、けん玉にフォーカスしながらPRするわけだが、よくある街の観光PR映像などとは異なり、けん玉を通して普段着の廿日市の魅力が伝わってくる。ナビゲーターを務めるサンフレチェ広島アンバサダーの森崎浩二さんの語りは木訥ながら、アスリート出身らしい直向きさや負けん気の強さがアクセントとなって、見る者を引き込んでいく。市内のけん玉教室やけん玉の製造工場、けん玉商店街といった訪問先も、魅力的である。
発祥の地とは知っていたけれど、100周年とは知りませんでした。元Jリーガー森﨑浩二氏をナビゲーターに無15分番組を全3話で構成され、森﨑氏がけん玉を習得しながら廿日市市をPRする。
けん玉発祥のいきさつやけん玉教室の子供たち。スゴ技を披露してくれる。けん玉はすべてのスポーツにつながるという指導者の言葉に納得。年齢、性別、人種を問わない競技、それがけん玉の魅力だと感じさせてもらった。
防災番組は、見ている人に「我がこと」と感じてもらえなくてはならない。作品では、南海トラフ地震のメカニズムや予想される被害規模を解説するとともに、BTVエリア内の海岸沿いの地域で、どういった防災対策が取られているかを検証する。日南市が示している避難経路や油津中学校の非難訓練、避難場所への移動などを、ディレクターが体験的に取材、点検していくことで、説得力を持つ内容になっている。視聴者の理解の程度を意識した目線の低い作りに好感が持てた。
異常気象が通常化する現在、的確な地域防災対策を示すことは地域メディアの大切な業務である。この番組は、まず南海トラフ地震の想定災害地図を示し、次に映像で津波の凄まじさを解説、街の緊急避難ビルを紹介、それへの市民の疑問に答える。次に警報発令後の避難場所への経路を、実際に辿って見て、問題個所を指摘、更に夜間にも再度挑戦、夜道の課題を的確に指摘する。最後に住民アンケートを実施、事前に自分の足で避難場所を確認する大切さを強調。要領を得た実行可能な地域の防災番組である。
南海トラフ地震とは?資料や専門家の知見で知識を深め、沿岸地域を取材して防災策を考える。まず知ること。この辺までこれまでの災害防災番組を大差はないが、この作品はもう一歩踏み込んだ点が素晴らしい。それも新人が…。
役所は大丈夫だというが、日南市の住民は避難所の高さに不安を持つ。一方、避難所の実態を知らない人が意外に多かった。高台に登るには体力が必要だし、夜の避難道路は暗くて歩きにくいなど課題がいっぱい。そこで番組では、実際に避難所へ登り、夜の避難路を歩いてみる。実証番組、検証番組として評価したい。
副題通り、命を守るために役立つ番組だ。
南海トラフ地震の想定では、日南市には地震から最速14分で津波が到達する。しかし実際の避難の際は、揺れている時間(3~5分)を差し引いて考える必要がある。その指摘は、14分間で逃げればいいかと、ぼーっと考えていた評者などには新鮮だった。
避難経路をスタッフが実際に歩いて見た結果も参考になる。登り路には倒木があったり、車いすでは難しい経路もあること。さらに夜間は一帯が停電して転ぶ危険もあるため、ライトが必須であることなどをわかり易く伝えてくれる。
今後も続けるという具体的な防災取材が期待される。
ロリータファッションのショコラさんに誘われるように、番組が展開し、興味をそそられながら見入ってしまった。地元の繊維工場が紡ぐ尾州生地への愛がたっぷり詰まった14分だった。短い尺の中で、尾州生地の手触り 質感などの魅力を十分に感じさせ、ショコラさんを通して、生産から商品化までの地元企業の取り組みとその新たな可能性を見せたのは見事。産地の職人を大切にしたいというショコラさんと制作者の思いが響き合った佳作。
一点、私の視聴環境のせいかもしれないが、音に関して、もう少し丁寧でもよかったのではないだろうか。
冒頭から「機屋さん(繊維業)とロリィタ」という組み合わせに引き込まれました。臆せず伝統産業の世界に飛び込んだショコラさんと、そのコラボに目を向けたディレクターのヒット作です。地場産業を担う経営者が、ショコラさんの提案によって尾州生地の新しい魅力を発見する展開が面白く、両者の化学反応が地元の栄養源になっていく予感がしました。とても分かりやすく構成されていますが、次へのステップとして「もし30分枠ならどのように構成するか」というトライをしてほしいと思います。(ちなみに私は、ショコラさんの頭の中をのぞいてもう少し思考を紐解いてみたい)これからもぜひ若い感性で街を元気にする企画を発信していってください。
新人ならではの視点の一つに「ニュートラルな見方」がある。この作品はまさにその“ニュートラル”の賜物だ。
機織業の中の人に対して、自身の想いをぶつけるショコラ、彼女と共にニュートラルな見方でナチュラルに接し取材する制作者、対象者との会話が自然のまま切り取られ構成されている。取材者も機織業の方も、素直な気持ちのままに進行しイノベーションが生まれる。多彩な情報がわずか14分に凝縮され、尺以上の充足感がある。
教育文化県としての面目躍如たる番組、出演者のコメントが全て簡潔で明晰である。古墳インストラクターの石田秀明、世界民俗人形館の新海徹、豪商田中本家の田中慎太郎、須坂クラシック美術館の廣田華子、須坂紙芝居の里の廣田華子、それに青年会議所の面々。皆さんの話、いずれを聞いても須坂の街を挙げて、文化を守ることに力を入れていることが判る。古墳の周辺を含め、いくつかの文化施設を訪ねて見たい。
信州須坂はコンテンツの宝庫ですね。良い題材に恵まれていて、作り手にとってどこから攻めても面白いです。新人賞部門からの応募だけど、若いディレクターを育てる土壌がある同局はとても恵まれていると思います。
制作コメントを拝見すると、一眼レフカメラで撮っている事を強調されているが、ナレーションが多くて情報量も多いので映像のピン位置が特に人物に向けられた時に、狙いと意図が映像とナレーションでちぐはぐに感じられます。いっそのこと人物はパンフォーカスでも良いかなと私見ですが感じます。配信でスマホとかPC画面では良く感じても大画面だと意図が散漫になり少し集中できません。今後に期待します。
写真をクリックするとプロフィールをご覧いただけます。
音 好宏 氏
上智大学文学部新聞学科 教授
1961年、札幌生まれ。上智大学大学院博士課程修了。日本民間放送連盟研究所所員、米コロンビア大学客員研究員などを経て、2007年より現職。専門は、メディア論、 情報社会論。著書に「放送メディアの現代的展開」(ニューメディア)、「総合的戦略論ハンドブック」(ナカニシヤ出版)など。
河野尚行 氏
元NHK放送総局長
1962年NHK入局、番組ディレクター。
北見放送局など5つの地域放送局勤務の後、N H Kスペシャル番組部長、編成局長、放送総局長・専務理事、NHKサービスセンター理事長を歴任。
現在、ギャラクシー賞、放送文化基金賞、地方の時代映像祭審査委員。
佐々木嘉雄 氏
一般社団法人ケーブルテレビ情報センター 理事長
1967年(株)放送ジャーナル社入社、ケーブルテレビ関係を中心に取材・執筆活動を続ける。
1975年に「日本ケーブルテレビ大賞」番組コンクールを創設、1996年「第10回ケーブ
ルテレビ功労者表彰」、「ケーブルマン・オブ・ザ・イヤー2007特別賞」受賞。
現在、一般社団法人ケーブルテレビ情報センター 理事長。
橋本佳子 氏
株式会社ドキュメンタリー ジャパン プロデューサー
1985年よりドキュメンタリージャパン代表を20年間務める。
ドキュメンタリーを中心に数多くの受賞作品をプロデュースし、現在もテレビと映画の両分野で精力的に作品を作り続けている。
放送文化基金個人賞、ATP個人、特別賞、日本女性放送者懇談会賞受賞。
藤森 研 氏
日本ジャーナリスト会議 代表委員
1974年に朝日新聞に入社し、山形、浦和支局、社会部、朝日ジャーナル編集部、論説委員、編集委員などを歴任し、記者時代に司法、メディア、労働、教育などを取材。
2011年から専修大学、著書に『日本国憲法の旅』、共著に『新聞と戦争』など。
日笠昭彦 氏
LLC創造ノ森 代表
日本テレビ 元「NNNドキュメント」プロデューサー
各局の報道番組やバラエティー番組を手がけた後、2001年に日本テレビと契約。
多い時は年間30回近く地方局に足を運び、構成から仕上げまでディレクターの伴走者の役割を務め、以後「NNNドキュメント」を14年間、600本以上プロデュース。
2015年9月に創造ノ森を設立。
現在はTV番組の他に書籍や映画のプロデュースも手がける。
服部洋之 氏
映像メディアプロデューサー&トータル・コンディショナー
中部日本放送(株)を経て、1998年(株)東北新社入社
報道・情報番組、ドキュメンタリーなど制作畑を中心に勤務
NexTV-Fコンテンツ委員、Channel4Kスタート時から4K番組の制作を手がける。
ザ・シネマ及びファミリー劇場代表取締役社長を歴任。
2022年7月より、フリーランスとして独立。
NPO法人放送批評懇談会「GALAC」編集委員。
金森郁東 氏
株式会社ユー・ブイ・エヌ 代表取締役
昭和31年3月20日生まれ、石川県七尾市出身。
東京電機大学卒業後、機器メーカーや放送系技術プロダクションを経てユー・ブイ・エヌ(UVN)設立。
放送系スタジオシステムの構築設計や運用に従事する。
これから主流となるIP配信の源流とも言えるネット動画配信初期よりシステム構築・運用を経験している。
4K・8K黎明期からUHDコンテンツ制作に従事。
UHD普及促進に特化してOver8K.com プロジェクトを立ち上げる。
2002年より現職。
【一般社団法人 日本ケーブルテレビ連盟 地域・コンテンツビジネス部】
〒104-0031 東京都中央区京橋1-12-5 京橋YSビル4F
tel:03-3566-8200 fax:03-3566-8201
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